芭蕉の処刑

 あれは、小学校6年生、音楽の時間のことだ。
 音楽の教師が新任の女の先生で、僕は口をパカッと開けて歌っているフリしながら、けっこうイイ女だよなー、などとボーッと考えていた。そしたら、その先生が新任教師にありがちの、いさみ足で
 「これからレコードをきいて感想文を書いてもらいます」
なんて言い出したんだ。
 で、かけたレコードってのが、滝廉太郎の曲で、ほら、箱根の山は、てえやつだよ。いきなりそんなの聞かされて、何か書けって言われても無理な話だろ。でもまあ、その先生のさ、特に口もとのあたりが、ちょっといいな、と思ったし、何か面白いこと書いてびっくりさせようって考えもあって、もう、一生懸命聞いたわけ。

♪ハコネノヤマハテンカノケン……
♪センジンノヤマテンジンノタニ……

 何をうたっているのかさっぱり分からねえよ、日本語か、こりゃあ? 箱根の山で一体何があったというんだ。イライラしてきいていると、突然、一ケ所だけとてもはっきりと聞き取れた。

♪バショウノショケイハ……

 バショウノショケイ? バショウの処刑! 松尾バショウ! そうか! 分かった! 何だ、そのことか!
 僕は猛然と書き始めた。
 「この歌には バショウノショケイと出てくるがこれは実は忍者の松尾バショウが抜忍として仲間に処刑されたことを暗示するとても暗い歌で、これを作った滝はものすごい奴です。松尾バショウの一生はなぞが多いが、俳句はかなりイケてるね。すくなくともかれの友人の影丸やフジ丸や赤影よりもずっとうまかったので、嫉妬されていたのでしょう。ある日、友人たちはバショウをダマシて、箱根の山のせんじんの谷から落として殺し、死体を滝つぼに捨てた。その滝の名がレンタロウという……」

 てな事を書いて出したんだ。こりゃあ、ウケルだろうなと思ってたら、後で呼び出されて「マジメに書かなきゃダメよ」なんて叱られちまってさ、もうガッカリ。でも、その怒った時の先生の口もとも、まあ、なかなかのもんだったんだな。
 今にして思えば、この連載の文章みたいなのを、すでにあの時書いていたわけで、何だ小学生の頃から全然進歩してないじゃないかと思うともう恥ずかしいやら、愉しいやらで、穴があったらぜひ入ってみたいし、こんな自分を褒めてあげたくないわけでもなくはない。


 暗闇坂鬼語―または、ナイトモードの野口英世

 近所にある暗闇坂は、道の両側にうっそうと木々が繁り、その名の通り昼間でも薄暗いのだが、これが夜ともなれば人の足もまったく途絶え、ここが東京かと疑うほどに寂しい道になってしまう。
 江戸の方角からみて鬼門にあたるこの辺では、どことなく魔がひそむような、おどろおどろしい空間が見え隠れしている。そういえば数年前、ここで殺人事件もあった。
 凍てつく空気に月さえも黙る夜半過ぎ、今しも背中の方から鬼に喰いつかれるような心持ちで、足早に帰り道を急ぐ僕は、ふと背後に化け物の声をきいた気がして足を止めた。耳をすますと、確かに坂の上から、地虫の這いずるような声がこちらに近づいてくる!

 “ちょっつ、おわああ! てえか、おわああ、おわあああ!”

ヤベエな。恐い事考えてたら、本当に来ちゃったよ。オレ、けっこう霊感とか強い方なんだよな……金縛りとかに合うしー、爪の間から癇の虫だって出ちゃうし、中学生の頃、コックリさんで、高村光太郎の霊を呼んだりして、「智恵子抄」とか朗読してもらったし、
 チ・エ・コ・ハ・ト・ウ・キ・ャ・ウ・ニ・ハ・ソ・ラ・ガ・ナ・イ・ト・イ・フ……
 江戸時代の侍の霊魂が憑いてますな、と見知らぬ人に言われた事もあったよな。  
 あー、もう、すぐ後ろに来ちまった。
 あまりの恐ろしさに、僕は声も失い、身動きひとつ出来ないまま立ちつくしていた。見たら喰われるので、固く眼を閉じていると、化け物は背後をゆっくりと過ぎていく。

 “マジ、てゆーか、チョーマジ。すぐそっち行くって。ほんとマジ……おわあああ!”

 何だよ、ただのケータイオヤジじゃん! ああ、びっくりした。おっかねえから、こんな時間に出てくんなよ。

 “あのよ、野口英世のよ……何てたっけ、野口英世のよお……あれ、ほら……野口英世のやつだよ、そう、おわあああ……あ”

え? 一体何のこと? 危険がないと分かると、前を歩いて行くオヤジの会話が急に気になったりする。

 “そお、ナイトモード……え、当たり前じゃん。そう、マジ。 マジ野口英世。ナイトモード。パツキン、マジパツキン、おわああああ……”

何だよ、「おわあああ……」ってのは笑い声かよ。それにしてもナイトモードの野口英世って何の事? あるいは、何かの符丁だろうか。ああ、聞きたい。ねえ、オヤジ、教えてよ。ナイトモードって何? 野口英世って何の事なのお?

 僕の思いをよそに携帯オヤジは坂を下りきった所でタクシーに乗り込むと、もと来た坂の上の方向に猛然と走り去って行った。


 魚河岸テレフォンショッピング!

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 今日は毎朝のセリにもとても便利な、手やり機能付マジックハンドをご紹介します。このように手元のスイッチを押すと、あら不思議、マジックハンドの先が金額を示す手やりの形になります。どうですか、メカジキさん。

 「いや、私も先ほどから使っているのですが、まず持った時のフィット感がとても良いですね。それに目立つのでマグロをセリ落しやすくなるでしょう。また、背中がかゆい時には“孫の手”がわりにもなるんですよお!」

 煩雑な手やりゼリもこれなら安心! 今なら、手カギ、手ぬぐい、懐中電灯のセリ3点セットをお付けして、はい、このお値段!
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 今日はオールシーズン対応のインテリジェント機能付長靴をご紹介します。夏は異常に暑く、冬は凍てつく寒さという過酷な市場環境に即応した特殊テフロン仕立3段逆スライド方式を採用しているため、防寒と通気性に抜群に優れています。また、履くだけで15センチも背が高くなるシークレットブーツ加工を施してありますので、女性の方でもストレッチブーツがわりとしてもお使いになれます。それに、ほら、ここのところが、ね。尖っているでしょ。凶器シューズにもなるんですね。どうですか、メカジキさん。

 「いや、私も先ほどから履いているのですが、何かこう、欲しいものがいっぺんに揃っちゃったなって感じですね。毎朝、セリ場へ出るのにも、これを履いてると、ランラララと、軽くスキップしちゃいます」


 まさに無敵の市場人御用達長靴。今なら金の中敷き、銀の中敷き、普通の中敷きの3点セットをお付けして、はい、このお値段!
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 今日はインテリアから添い寝まで幅広い用途にお使い頂ける特製「マグロのぬいぐるみ」をご紹介します。このようにですね、質感から生臭さまで忠実に再現した精巧な仕上げは世界初で、ビギナーからマグロマニアの方まできっとご満足いただける商品です。また、鑑賞用としても、置いとくだけで食卓に凄みが出ること請合いですね。どうですか、メカジキさん。

 「いや、私も先ほどから抱いているんですが、このヌラヌラ感といい、冷たさといいとっても良い肌触りですねえ。もう、アタシをどうにでもしちゃって、という感じです。これは独身者にはたまらないでしょう」

 あなたの人生のお供にマグロを! 今なら本物のマグロ、キハダ、メバチの3点セットをお付けして、はい、このお値段!
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 朝風呂臨死体験


 冬の寒い早朝、起きぬけに風呂に入ったりすると死ぬそうですな。特にそれが、やけに熱い湯だったりすると絶対に死ぬと言われてます。しかも、怒りながら入れば、これはもう完全に死ぬにちがいありません。あまつさえ誰にも気づかれないで、水も飲まずに長湯したりすれば、そこに待っているのは、死です。
 そんなら試してみようと思うのが人情で、わざわざ明け方に起きて、クソ熱い湯に飛び込んでみました。
“あち、あちち、ふー、あったまるねえ。えーと、怒るんだっけな。何か腹立つことないかな……そうだ、長靴が2ヶ月でダメになったのは腹立つぞ! やっぱ、ウロコじゃねえとダメだ!  それと、小車に足踏まれたい! これで3回目じゃん!”
 無理して腹を立ててると、本当に心底腹が立ってくるから不思議。
 “もー、あったま来たーっ! 自分の金をおろすのに金とりやがって!105円とは何事だ! あと、サポート電話てえのは繋がることあるんかい! 話し中・話し中・話し中・話し中・話し中・話し中・話し中・終了しました……て、バカにしとるんか! それとオレの頭はヅラじゃねえつーの! あと関係ないけど通勤定期に50歳って書いたら、落としちまって、届けられたけど、テレるじゃんか!”
 そうして、怒り心頭に達したまま長湯していたら、やがて頭はガンガン、身体はフラフラ。本当に意識が遠のいてきて、やったぜ、逝ったぜ! ついに死にました。
 死んでみるとおかしなもので、頭がボーッとするしー、身体がだるくて仕方ないしー、湯上がりのビールとかうまいしー、会社行く時間だしー、どうせ死んだんだから、もう会社なんか行かなくてもいいのだ。電話で辞表を叩きつけてやる。

「もしもし、すいませ〜ん、カゼひいたみたいで、本当はスゴク仕事したいんですけどお、今日は休みます、みたいな」
「あ、そう」

 下界に別れを告げた死者の私は、とりあえず寝ころんで、朝のワイドショーをゆっくりと観て、そのあと西部警察の再放送も観ちゃって、ひと眠りしたら、幽体離脱でもしてパチンコに行くのだ。
 あー、極楽、極楽。まさに極楽往生でございますな。


 春とか恋とか入れ歯とか(三題噺)

 まったくスプリングな季節の到来ということでボヨンボヨンです。もう、恋の季節の予感が ♪ルリルラルララ、と恋の季節を予感させちゃってます。ところがこの予感というのが、あまり当たらないわけで、この女はオレのことが好きだな、とか思ってると、まずハズレてますな。
 “あら、アンタなんて何とも想ってないわヨ”とはっきり言われてみたり、
 “むしろキライって感じ”などと明確に言われたり、
 “ちょっと、アタシの風上とか歩かないでよ”と包み隠さず言われてもうガッカリ。
 ふと気づくと全世界の女性の約100%が自分に気がないのだという事実の前で暗澹たる気持ちになり、春だ、恋だなんて場合じゃなく、こりゃあ世界中の女性に復讐だあと、コンビニへ行ってパンや大福にせっせと針を入れたりする傾向にあるという調査機関からの報告が、などと嘘を書いても良いのですか?
 そんな今日このごろ、もしかしたら針が入っているのじゃないかしら、とビクビクしてパンを食べると、中から針じゃなくて入れ歯が出てきた日には、なおのことびっくり! まったく入れ歯というものはいろんなところから出てきやすいものですから、注意が必要です。ポケットとか仏壇のひきだしとかコップとか口の中からどんどん出てきます。
 やっと手に入れたプレミアもののバーキンから出てきたりして、しかも金歯でびっくり。(バーキン、バーキンと口の中で10回つぶやいてごらん)Gショックとかと間違えて入れ歯をつけてしまって、時間を見た時にびっくり。ノートパソコン開いたら、実は巨大な入れ歯で、手に食いつかれて又もびっくり。路チュウのあと、入れ歯が口に吸いついて離れなくなって、彼女を見たらフガフガ言っていてドヒャーッとびっくり。
 総入れ歯、じゃなくて、そういえば、子どもの頃に入れ歯を取り外しする人を見て、アンドロイドに違いない、スゲエな、カッコイイな、と憧れたが、大人になった今でも湯飲みで入れ歯をチャパチャパ洗うのは、ちょっといいかな、と思う。
 ていうか、こんな事を長々と書いている自分が信じられないっていうか、最近、自分の書くものがちょっと上すべっているんじゃないかと心配で心配で、その心配疲れから夜はぐっすり眠れて、寝起きがいいみたいな。
 まさに若毛の至りみたいな。
 それはちょっとちぢれ毛みたいな。


 悪口はやめて!

 魚河岸の人たちって、みんな口がとても悪いのです。何かというと、
  バカヤロウ! のろま! 阿呆!
などと怒鳴りますが、これは挨拶がわりみたいなもので、まったく悪気はありません。
  低能! カス! スットコドッコイ!
ホントに悪気がなので、長いこと河岸にいるとこんなことは気にならなくなります。
  腰巾着! 便所下駄! 水死体でぶ!
まあ、この程度の言葉はむしろ心地良いくらいに感じるものなのですが、何かの拍子に本当に気にしちゃったりして、
 ガーン!!
と鈍器のようなもので強く殴られたようなショックを受けることもあります。

 しかし、まあ、まったく心にいちもつもないナイスな集まりですから、心の傷になることなどはあり得ません。
  不適切野郎! 糞ったれ! 落武者ハゲ!
ホント、むしろ親しみを込めて言われているようなもので、傷つく人などいないのです。
  キンカクシ男! 人生の敗残者! ヒヒじじい!
まあ、こんなことに傷つくくらいじゃ、河岸で仕事は出来やしないのですが、何かの拍子に本当に気にさわったりして
  ベリバリッ
とバールのようなものでこじ開けられたように心が傷つくことも、ままあるわけです。

 しかし、まあ、基本的には良い人たちばかりなので、いがみ合ったり、殴り合ったり、殺し合ったりすることなどなく、さわやかに、上記のような軽い悪口を言い合って仕事してるんですね。
 でもこれは仲間同士、あるいは店主から従業員に対する場合だけのことで、従業員が店主に向かって言ったりすると、こりゃ大変です。
「やい、バイアグラ親父! いつもふんぞり返ってやがって、このデブ公! ゴルフのスコア気にするよりも、オレの給料上げてみろい!」などと試しに言ってみるといいですね。きっと“2秒”でしょうね、楽しいですね。

 この“2秒”というのは「お前はクビだ」と発声するのに要する時間のことです。


 “気”を送る人

 まったく驚くのは人々の健康指向で、様々の民間療法が流行っては消えていきます。やれアガリクス茸が良いとか、ココアが効くとか、ブルーベリーがバッチシよとか、オシッコが……そうだ、飲尿療法って、あれ、まだやってる人とかいるんですか? 一時はブームで、
 「飲んでますか?」
 「飲んでますとも!」
 なんて会話をよく聞いたもんだった、かどうかは忘れましたが、
 「いやあ、良い尿を出すには寝不足はいけませんからな。ワタシなんざ良質尿のために毎晩たっぷりと寝てます。8時に寝ます」
なんていう飲尿マニアがいた、かどうかも忘れました。
 “朝の一番搾り”なんて缶入飲料になって、自販機とかキヨスクで売られていた、というような記憶もまったく定かではありません。
 それと、気功に凝ってるオヤジとかよく見かけますね。肩が痛いとか腰が辛いと言ってる人のところにやって来て、
「うむ、“気”を送って治してやるぞ」などと言って手をかざしてきます。はっと気づくといつのまにか背後に来て勝手に“気”を送るのでビックリ。こんな人には「おかげで良くなりました」なんて言うと満足して離れていくのですが、邪険にすると背後霊となって、とり憑いたりするから後が大変です。
 本屋で立ち読みしてたら急にウンコしたくなって、おやっと振り向くと気功オヤジが尻に向かって“気”を送っているとか、プリクラなんかにもちゃっかり心霊写真みたいに映っちゃって、やっぱし“気”を送ってるとか、そういう事ってありますか。
 しかし、気功ってのは誰でも出来そうなので真似しますが、本当はうんと難しくてあのパワーを得るには何かこう、ヨガのような事とか、精神集中の訓練とか、虎の穴でライオンと戦ったりとか、そういう事するのですか。
 関係ないけど、クラッシュしたハードディスクに“気”を送ったら何故か直ったりしちゃいましたので、アタシにも気功のパワーがあるようです。
 なので、ネットを使って“気”を送ろうと。こりゃあもう史上初の試みです! 皆さん、ディスプレイに患部などを近づけてじっとしているように。
 では、いきますぞ!

気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気汽気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気気……

 ふう……カット&ペーストしないで全部手で打ったので非常に疲れたが、これだけの“気”を送ればもう大丈夫でしょう! もはや余力はないので、じゃあまたね。
 バッハハーイ、て古いよ、おい。


 “超能力”を送る人

 まったく、あらま欲しきは超能力で……って、今テレビでやってるから言うのですが、こいつがあればもうどんなことでもOKという気がします。
 透視能力を使ってスゴクいかがわしいものを見たり、
 念写能力を使ってスゴクいかがわしいものを写したり
 瞬間移動を使ってスゴクいかがわしい所へ行ったりとか、こりゃ楽しいわい。
 使い方によっては、金でも女でも名誉でも地位でも地域振興券でも何でも手に入るって感じであります。
 さて、我々の周囲はまったく超常現象に満ちていて、オレって超能力者? と思うような不可思議な出来事が日常的にありますな。時代劇を観ていて“む、この廻船問屋源兵衛が黒幕だな”と当ててしまったり(予知能力)夜遅くしたたか酔って「代々木上原」あたりで電車に乗り、はっと気づくと「取手」とかの車庫にいて、しかも夜明だったり(テレポーテーション)通帳を見なくても、銀行残高が限りなくゼロに近いことが分かったり(サイコキネシス)繊維質をたくさん食べてると、もう朝からプップクプーと出っぱなし(屁コキネシス)と、まったく驚愕の毎日なのですが、冷静になってよく考えれば、こんなことは超能力でも何でもないことに誰でも気づきます。それから、「近頃、電波がオレの悪口を言い過ぎる」などという人も超能力者ではないようですね。
 そういや、ずっと前に超能力ブームで、スプーン曲げとか流行ったとき、アタシも曲げられたので、わりと超能力者? ていうか曲ったからって日常何の役にも立たないわけです。カレーを食べるたびにスプーンが曲がってしまうので、手で食べなけりゃならなくなって、ややインド人に近づいたりもしましたが、この場合、左手は使っちゃいけません。
 そういうわけで(どういうわけ?)、ネットを使ってアタシの“超能力”を送ろうと。こりゃあもう史上初の試み! ていうか、単に前回の二番煎じなだけですが。ディスプレイに壊れた時計とかを近づけてると直ったりするかも、と。
 じゃあ、いってみますかな!

ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビ匕ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビ……

 超能力がなぜ“ビ”だよ、と自分でツッコミ入れて、またしてもカット&ペーストしないで打ったので疲れましたわい。もうエネルギー電撃波を使い過ぎたバビル2世のようにヘロヘロ、って何だそれ? なので、3つのしもべのロデム(知ってる?)に乗って自宅へGO!
 じゃあ、バイビー、て古すぎるよ、オイ。


 私って○○じゃないですかぁ

 “私って○○じゃないですかあ”
 と初対面なのになれなれしく言ってくる人がよくいますな。
 “私ってお寿司に目がないじゃないですかぁ”とか
 “私ってブルーベリーとか結構好きじゃないですかぁ”などと。
「オレはアンタのことなんて全然知らないし、興味もねえよ」とツッコミたくなりますが、ま、それほど目くじら立てることもないわけで、ああ、この人は自分の事が大好きでしょうがないのね、と軽く受け流すのが良いようです。
 しかし、
 “私って右の股関節のとこがとくに股ズレしてるじゃないですかぁ”
 とか
 “私って蕎麦を鼻から入れて耳から出すの得意じゃないですかぁ”
などという人がいたら、これは「オヤッ!」と思うわけです。
 ていうか、“私って○○じゃないですかぁ”構文って、結局は自己紹介だったりするので、なるべく個性的かつ相手をこちらのペースに引きずりこむようなインパクトを持って使うのがコツですね。
 たとえば、いきなり警察署に行って、初対面の警官に
 “私って鈍器のようなもので妻を殴打して殺害したので、ここへ来ちゃったじゃないですかぁ”
などと言ったら、そりゃ自首じゃないですかぁ。

 や、

 “私って夜中になると首がにょろにょろと伸びて、行灯の油とかペロペロ舐めちゃうじゃないですかぁ”
なんて人は「ろくろ首」なので、すぐに見世物小屋に出演して木戸銭を取りなさい。

 以上の好例が示すように、って何も示してねえよ! とツッコんでおいて、さて、毎回あやしげな事ばかり書いている私って、何を目的に書いているのか自分でも分からず、ただG女子大のNさんとか西新井のIさんや大物業会のOさんら周囲の「もっと書きなよ」という声にそそのかされて書いているだけ、というのはウソで、何も書けなくなったときに寿命が尽きるような恐怖感にさいなまれて書いている、というのも大ウソで、実は電波が書けと命令するんです、なんて正真正銘の超ウソで、まあ、惰性というか、時間の空費してるだけじゃないですかぁ。


 魚屋殺美辞麗句責地獄(さかなやごろしほめまくりのじごく)


 魚河岸のオヤジさんはとてもシャイな人が多いので、他人に面と向かって褒められたりすると、ものすごく照れて、わけも分からず怒っちゃったりする。
「親方、いつもながらに見事な腕前で……」
「うるせい、バカヤロウ!」
照れながら威張ることをテレバるというが、本人はもう穴があったら入りたいほど恥ずかしがってるのだ。こんな死ぬほど照れ屋のオヤジをつかまえて、大勢で囲んで褒めちぎったら拷問である。あまりのこそばゆさにいたたまれなくなって、オヤジはもう七転八倒の苦しみだ。

「おい、マグロ屋のテツゾウ。アンタは何て善いマグロ屋のオヤジなんだ。人情に厚く、面倒見も良い。男気もある。世間でアンタを何と呼んでいると思う。みんなアンタを“仏のテツ”と噂してるんだぜ。なあ、おい」
「そうだ、仏のように善い人だ」
「人情家だ」
「ホトケ様だ」
「人物だ」

“や、やめてくれ! 気色悪い、オレを褒めないでくれ〜!”

「そんだけじゃないぞ。アンタが隠れて捨て猫を世話してる事だって、みんな、ちゃ〜んと知ってるんだぜ。そんな恐ろしいツラしてるが、実はやさしい心の持ち主だということをな。なあ、おい」
「そうだ、ムツゴロウさんみたいな人だ」
「動物愛護家だ」
「やさしい人だ」
「人物だ」

“うおおお、もうやめろ! やめて下さい、お願いします。もう褒めないでぇ……”

「ふふふ、だいぶ弱ってきたな。しかし、それだけじゃないぞ。いいか、“仏のテツ”、アンタは好人物に乗じて慈善団体に寄付までしただろう。恵まれない子供たちを助けているだろう。この素晴らしい魚屋め! なあ、おい」
「そうだ、笹川良一みたいだ」
「慈善家だ」
「素晴らしい人だ」
「人物だ」

“ゼイゼイ……も、もう、やめて……”
鉄夫はあまりの褒め言葉に、すでに虫の息である。

「ふふ、もう一息だな。おい、トミ公。ちょっと前へ出ろい。てめえはこのテツゾウ親方には日頃から一方ならぬ世話を受けてるはずだ。今日はその恩返しだ。遠慮はいらねえ、とどめを刺しな!」
トミ公は平身低頭のまま“仏のテツ”に近づくと、ボソッと耳元にささやいた。
「……善人 」

“ぐおおお……ぐぶっ”

「死んだ」
「何て安らか死に顔だろう」

「まるで聖人のようだ」
「実に人物だった」

これが魚河岸のホメ殺しである。


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