口上



 ベンベン!


大東京のど真ん中 銀座のおとなり築地の町に 

世間じゃまだまだ朝ぼらけ 誰もが寝ている時分から

響き渡るは怒号の如き かけ声 せり声 売り子の声に

喧騒渦巻く人波分けて 進みてゆけば魚屋の水を張りたる軒先に

並びし鮮魚の目にも涼しき




およそここを訪れる誰もがびっくりするものは 銀の鱗もピカリと光る

魚の活きの良さにも負けじと 威勢を張ったいさみ肌

どうでえこいつぁ上物だ おう、買わねえか てやんでえ

持ってきやがれ こんちくしょうと

口を飛び出す気風の良さで 肩で風切る兄ィ連



 不況 リストラ 失業と 冷たき風吹く世間にあって

気骨に満ちた勢いと 何処か懐かし人情が ドラマを織りなす別世界

この東京が大江戸と呼ばれて以来の四百年 歴史と誇りを受け継いだ

ここは都民の台所、東京中央卸売……なんて名前は長すぎら

ここが築地魚河岸の 活きと意気とが交差する いつもの朝にございます


ベンベン!


 さてもこれからお話するは この魚河岸がその昔

花のお江戸は日本橋 たもとにズラリと並んでた そんな時代の物語

威勢と張りを売りものに「日に千両の商い」と その繁栄を謳歌して

独自の文化を育んだ 日本橋魚河岸の笑いと涙の興亡記

いつの時代につくられて どんな具合に発展し やがて消えていったのか

遠い昔のご先祖さまの 胸のすくよな大活躍を 調子に乗せてお聞かせしましょう



それでは、日本橋魚河岸年代記の、はじまり、はじまりぃ〜


 ベンベン!


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