第2回 トロと赤身

 「マグロのトロって昔は捨てられていたんです」
なんて言うと皆さんはびっくりするでしょう。何しろトロは大人気の高級食材ですから。でもこれは本当の話。戦前まではマグロといえば赤身のことをいい、トロはせいぜい安価な加工品や惣菜に回されれば良い方で、ほとんどアラ扱いされていたのです。昔の日本人は脂ぎらいでお刺身もサッパリしたものを好みましたから、脂の乗ったトロを食べてみようという発想すらなかったんですね。
 はじめてトロの美味しさに気づいたのは、昭和初期の学生さんだと言われています。苦学生の彼らは安価なトロを喜んで食べました。それからもちろんマグロ問屋の小僧さんたちも、まかないご飯でお腹一杯にしていたそうです。当時トロはそうした一部の人だけが食べるものでした。
 それが戦後になって日本人の食生活が急速に洋風化し、脂肪分が好まれるようになると、俄然脚光を浴びることになりまして、口の中でとろける美味しさが肉食に慣れた人々の味覚にジャストマッチ。みんなトロに魅せられてしまいました。かくしてトロと赤身の人気はいつのまにか逆転したのです。結局は食べ物にも流行があって、どちらの価値が高いかは、その時々で違うというお話です。
 いくら食べても飽きのこないサッパリ味の赤身とまろやかな深味のトロ。
 バランス良く摂ってマグロの魅力を食べ尽くしましょう!


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