第3回 マグロの不思議な習性

 大洋を回遊するマグロの習性はナゾだらけです。
 たとえば、毎時20〜30qものスピードで移動するマグロは、一生休むことなく泳ぎつづけます。これは速度を維持するのに多量の酸素が必要となり、そのためかれらは口を開けて海水から酸素を補給しつつ泳いでいるからで、止まってしまったら溺れてしまうのです。なぜそんなに速く移動する必要があるのかは分かりませんが、生きるために泳ぎ続けるマグロは海のマラソンランナーといったところです。
 また、マグロは必ず集団で回遊しています。けっして単独では泳ぎません。いつも周囲の同類数を気にしながら泳いでいるのです。もしも何らかの理由で集団数が極端に減ってしまうとか、仲間からはぐれてしまうとかしたなら、マグロはストレス性胃潰瘍を起こしてやがて死んでしまいます。ひょんなことから、こうした「はぐれマグロ」が市場に上がることがあります。肌のツヤも通常で肉質も悪くなのですが、味わってみるとひどく酸っぱい。ストレスによって血液中のPH値が急激に上昇しているからなんですね。堂々とした姿をしながら、マグロはとても繊細な魚なのです。
 こうしたマグロの不思議な習性は科学的には解明されていません。でも、働きづめで、ストレスでいっぱいの私たち現代人にとって、どことなく共感を覚えるような気がしませんか。


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